絵を読もう

自称絵描きマンが絵について考えるブログ

日本特有の「恥じらい」文化

日本人は「恥じらい」、「奥ゆかしさ」を感じる女性が好みだという話をよく聞く。

今回は、なぜ日本がそのような文化を持つようになったのかを掘り下げていく記事だ。 

 

matome.naver.jp

 

アニメキャラの赤面シーンがまとめられているくらいだ。

さらに、pixivでは「恥じらい」というタグが付いたイラストが866件も存在している。(2018年4月3日、18時50分時点)

www.pixiv.net

赤面している女の子の姿が魅力的だ。

タグが付いているもの以外でも赤面している絵はいくらでも見つかる。

やはり日本人にとって恥じらいは正義。ということの証なのか。

さて、この「恥じらい」の文化、海外では見られない特徴だというのも、皆さまはご存知のことだろう。

そこで、筆者の浅知恵で恐縮であるが、日本特有の「恥じらい」文化のルーツを紐解いていこうと思う。そうすれば、上のリンクのように恥じらっている姿の作品が多数投稿されている理由もおのずと見えてくるのではないか。

今、この記事をご覧いただいているあなたの見識が少しでも深まることを筆者は切に願う。

徳川政権の影響 

徳川政権すなわち、江戸幕府封建制度の影響は見過ごせないだろう。なにしろ、約250年もの間、幕末を除いて、外敵からの脅威にさらされなかったのは大きい。

徳川家は外敵の侵略を防ぐため、キリシタンを追放した上、鎖国政策をとったのが決め手であった。

一度地理の視点で見てみよう。ご存じの通り、日本は島国である。

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これが大陸にある国だったら、鎖国したりなど到底できるものではないだろう。地続きなので、よその国が強い軍隊をもって攻め込んできたら、侵略されてしまう。もう閉じてはいられなくなってしまうのだ。

だが、日本は海に囲まれているので、要衝となる港などを押さえておけば鎖国が成立するのだ。

鎖国が成立したということは、他国からの侵略の脅威が薄れるということ。

 そうなれば、日本の人々は「お上に年貢を納めさえすればそれでいい」という思考になるだろう。実際、信念をもって、人とは違った言動をし、あえて筋を通す生き方をするものはいなかったのだ。*1

悪しき風習も裏を返せば…?

日本史の授業を思い出していただきたい。「村八分」という単語を学んだはずだ。村特有の秩序(あるいは、「空気」のこと)に反した者は容赦なく関りを断たれ、事実上その村での生活が出来なくなるといった意味だ。

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現代ではこれは日本特有の悪習であると批判的に捉えられる風潮があるようだが、裏を返してみれば、「村八分」を恐れて皆、場の空気を重んじる傾向を持つようになったために、日本人は「慎ましやか」になったのではないかと思う。

「慎ましやか」というのも言い換えたら、「恥」「奥ゆかしい」といった概念に捉えられる。

そういう日本人気質が今日まで引き継がれ、日本人男性は「恥じらいがあって奥ゆかしいパートナー」を求めるのではないだろうか。

80年代には女性向け雑誌「an・an」に、男性アイドル*2のコメントとして、

「彼女が欲しい。口数が少なくて、可愛くて、ひかえめで、日本的で、つつましいコ。

と書かれた記事が載っていたくらいだ。

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anan アンアン 642 - magnif  より

理想と現実の乖離

しかし、現代においてはこのような事を公言したところで、そのような女性はもはやそうそういないだろうと思う読者もおられることだろう。

まあ実際のところ、統計科学的にその通りであるかは検証できかねるが、残念ながら「慎ましやか」な女性は多かれ少なかれ減少しているんだろうなとは感じる。

あくまでも、なんとなくの範囲であるが。

少なくともこれは間違いないと思うのは、男女の雇用が平等になったことによる影響だ。

かつてはお茶くみなどの地位に甘んじていた女性も、いつしか男性と平等な仕事の権限が与えられるようになった。

その結果として、女性は気の強い存在となり、「慎ましやか」さとはほぼ対極の位置に立つようになった。その背景には、女性の経済的なゆとりを持つようになったというのがある。かつては男に嫁いで養ってもらうのが当たり前だった価値観が、見事に崩れ去ったのだ。

女性のありようが変革していく中、それについていけない男性も一定数いた。

要は、現実の女に背を背ける男性が急増したのだ。

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 変革に取り残された男たちのその後

だからなのかもしれない。そういった人たちを中心に、二次元キャラに「萌え」たりするようになったのは。pixivやTwitterを見てると、美少女のイラスト描きました!と喧伝したりして、その上人々の称賛を浴びている。称賛を浴びると言うことは、そういった女性像を求めていることの証明であろう。*3

こういったイラスト投稿できるSNSは、描き手と閲覧者にとっての、現実ではそうそう満たされない理想・欲求を体現するツールであると言っていいかもしれない。

www.pixiv.net

筆者も過去にこんなイラストを描いていた。

無意識に「恥じらい」を求めていたのかもしれない。

まとめ

・「恥じらい」文化は徳川300年の影響を受け継いでいる。

・「空気」を読むことを重んじる国民性がそこで培われた。

・それが転じて「恥じらい」の文化を熟成することに。

・今日においては、2次元に理想の「恥じらい」文化を投影したものが多数みられる。

参考文献

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

 

 鎖国が日本文化を熟成したという話があったが、記事の作成にあたってそこを参考にさせていただいた。

非モテ!―男性受難の時代 (文春新書)

非モテ!―男性受難の時代 (文春新書)

 

 社会学的に男女がどう変化してきたのかをまとめている本。

 

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)

 

 「筋を通す生き方」というくだりの表現は、この本を参考にした。

*1:出る杭は打たれるということわざがあるが、これは日本特有のもので世界には通用しないものだという。

*2:田原俊彦のこと

*3:むろん、100%そうであると断言はできないが。